小説版 ソードアート・オンライン

この記事は7年前の投稿です

※イラスト「キリトとアスナ・笑顔の二人」の記事を小説レビュー用に再構成しました。

初めて触れたソードアート・オンライン(SAO)はアニメ版。どこが違うかチェックしながら小説版を読んでみました。

SAO基礎知識
ソードアート・オンライン(SAO)の世界は、一人の天才開発者「茅場晶彦(かやばあきひこ)」が作り上げた仮想の世界。
ナーブギアと言われるバイクのヘルメットのようなものをかぶり、全身で体感できる仮想現実の世界に行くフルダイブができます。
しかし、その仮想世界はトラップでした。正式サービス開始の当日、集まる1万人のプレイヤーの前に現れた開発者「茅場晶彦」
プレイヤー達は、ゲームオーバーになったらナーブギアで脳を焼かれ死に、仮想世界から脱出する方法はゲームクリア(迷宮全100層の踏破)しかないと告げられるのです。
アバター(仮想世界での自キャラ)の見た目を解除され、現実世界の姿になったプレイヤー達。ソードアート・オンラインは、そこから脱出しようとする少年キリトと少女アスナの物語です。

小説ソードアート・オンライン第一巻

ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)

スイッチ

アニメ版ソードアート・オンライン スイッチシーン
画像引用:ソードアート・オンライン 第2話「ビーター」

SAOのモンスターは、プレイヤーの攻撃パターンに対応してきます。そこでプレイヤーは「スイッチ」というテクニックを使います。

アニメ版では、アスナとキリトが華麗に入れ替わって攻撃しているところが印象的でしたが、「スイッチ」がどんな行為なのか説明は無く、ただの交代攻撃だと思っていました。
しかし小説版では「スイッチ」についてきちんと解説されています。敵対するモンスターに「わざと」大振りな強攻撃をガードさせ、互いにモーション後の硬直が発生。そのタイミングを利用してプレイヤーが攻撃を交代、攻撃パターンを変化させて倒すテクニックだったのです。

ヒースクリフとの決闘

ずっとソロで活動してきたキリトが、アスナの立場を守るため、血盟騎士団の団長ヒースクリフとコロシアムで決闘するシーン。

アニメ版ソードアート・オンライン 決闘に負けたキリト
画像引用:ソードアート・オンライン 第10話「紅の殺意」

簡潔に書くとキリトは負けます。アニメ版ではキリトの剣をガードするヒースクリフの動きがストップモーション(コマ送り)になり、負けたキリトが唖然としている演出でした。

小説ソードアートオンライン ヒースクリフとの決闘
画像引用:ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)

小説版では、そのシーンがもっと細かく描写されています。ヒースクリフ相手に目にも止まらぬ連続攻撃を繰り出したキリト。その最後の一撃をヒースクリフが受け止めるとき、ゲーム世界の時間が止まりヒースクリフだけが動いているように感じた、とキリトは語ります。さらに言うと、システムが負荷に耐え切れずにポリゴン欠けが起こっているのも見つけているのです。

イラスト キリトとアスナ・笑顔の二人

イラストSAOキリトとアスナ笑顔の二人

命の危機を身近に感じた二人は結ばれ、戦いを避けてへんぴな田舎エリアに引っ越します。
そこで出会ったのが中年男性の釣り師ニシダ。巨大魚を釣り上げ、ニシダと打ち解けるキリトとアスナ。仮想世界からの脱出をあきらめているニシダに対して、アスナも以前は同じ気持ちだったと打ち明けます。その会話の中で、キリトと出会いと恋心を抱いたエピソードを話し、今はキリトがいるから強く生きられると語るのです。

アニメ版では、ユイ(幼い女の子)が登場して話が展開しますが、小説版1巻ではユイが登場しない分キリトとアスナの気持ちが丁寧に描写されています。

小説版1巻のまとめ

小説版1巻はアニメ版(1話~14話)と違い、ひとつひとつのエピソードが詳細に語られ、ストーリーが必要としている重要なエピソードのみが的確に組み立てられています。

74層のフロアボス「蒼眼の悪魔」を倒す時の死闘、他のプレイヤー達の死。キリトが昔所属していたギルドメンバー達が全滅した記憶。
囚われの世界から脱出する事をあきらめかけていたアスナに、ひと時の安らぎを与えたキリトとの昼寝の思い出。それらが繋がり、二人は強く結ばれていきます。コロシアムでの伏線が生き、キースクリフの正体にキリトが気付くのが違和感無く表現されていました。

アニメ版には文章だけだと表現が難しい視覚情報や、スピードを感じさせる動きの魅力がありますが、小説版はアニメ版以上にキャラの心情が表現されているところが好印象でした。